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NAO LINGERIE ​ 栗原 菜緒さん

更新日:2020年7月29日



ランジェリーを通じて日本文化を世界に届けることを目指し、見た目の美しさと機能性とにこだわった日本製ランジェリーを作りつづけている「NAO LINGERIE」の栗原菜緒さん。

エレガントでしなやかな一面と、クレバーで力強い一面を併せ持つ 栗原さんに、ブランド立ち上げからこれまでのお話と、自身のスタイルについて伺いました。


 


「好きなことをやりなさい、

という言葉を素直に受け止めました」




今のお仕事を始めるきっかけ、ブランド設立時のエピソードについて教えてください。


大学を卒業した時は、いまと真逆な世界_____非常勤公務員として省庁で働いていました。高校生の頃から政治や外交に興味があって省庁に入ったのですが、実際に働いてみたら私のフリーダムな性格が、その世界にマッチしてなくって……(笑

私よりも、そういう仕事に向いている方々が他にいらっしゃるな、と思って退職を決めました。



公的な仕事からランジェリーブランドの設立というのは、すごい転身ですね


周りの大人の方から、「好きなことをやってみなよ!」とアドバイスをもらったんです。

よくそういうお話は聞きますが、私は素直に「そうだよな〜」と思って。

中学生の頃から下着がすごく好きだったので、その道を目指すことを決めました。



下着業界での最初のキャリアはどうたったんですか?


商社のランジェリーデザイナー職に応募して、最終選考まで残ったのですが、やはり経験者じゃないと採用は難しくて。いきなりデザイン職は難しいと思ったので、まずは下着の販売職からスタートしました。




地道に販売からキャリアを積み重ねられたんですね


実はその販売職の仕事は半年だけなんですよ。なぜかというと、販売していた商品が補正下着だったこともあり、自分の好きな下着の方向性とは違うなと感じて。

じゃあ 他にどんなメーカーさん だったら働きたいのかな? って考えたときに、自分が好きだったのは、インポートの「アートのような下着」だったということに気がついたんです。でも、インポートには、日本人女性のサイズにフィットするものが少ない。

だったら、アートのように美しい下着を、日本人女性に合うブランドを作ればいい!って思ったんですよ。



1からブランドを作るのは大変だと思うのですが、どういう準備をしようと思ったのですか?


販売職をしていた会社には、「自分のブランドを作りたいので退職させてください」と言って辞めました。でも、デザインや生産の経験が全くないので、どうやって実際にブランドを立ち上げていくのか?そしてどうやって自分の好きな方向性の商品を売っていくのか?と考えたときに、マーケティングやブランディングがすごく大事なんじゃないかって思ったんです。それで、フロムエーで「マーケティング未経験」という募集を探して、建築専門の出版社に入社しました。



− そこで、デザインからではなく、マーケティングやブランディングから始められたというのが驚きです。


ただ、ちょうどその頃(2007年)出版大不況になってしまって…正社員として働ける約束がなくなってしまいました。一人暮らしだったので、とにかく仕事をしなきゃ!と思って、当時のつながりで建築関係のコンサル会社に入れたのですが、自分がやりたい事とかけ離れていくのが、どんどん苦しくなっていったんです。

これは軌道修正が必要だなと思って、2年間働いた後 再び転職活動を始めました。

改めてマーケティングやブランディングを学びたいと思い、ようやく、自分がやりたい事と繋がる企業に出会えました。




そこから本格的にマーケティングやブランディングを学んだんですね


はい。もともと、大手外資系のマーケティングを担当されていた方が立ち上げた会社だったんですが、そこで新規事業の立ち上げ等を一緒にやらせていただきました。

今ではあり得ないと思いますが、 休みも昼夜も関係なく精一杯働いて、本当にたくさんのことを体験しました。そこで一通り勉強した事で、残りはデザインだ、と思い、28歳の時(2012年)に、ミラノにデザインの勉強に行きました。


優雅な下着のイメージとは真逆の、ビジネス畑からのスタートというのが面白いですね。


そうかもしれませんね。友達からは武士って呼ばれてます。(笑





「大切なのは、着けていてテンションが上がる美しい

デザインと、1日中着けていても違和感がない心地よさ」




ブランドスタートからどうやってお客様に認知されるようになったんですか?


最初は白金のサロンからスタートしたんですが、当初からPR会社をきちんとつける、ということをしていました。

そして23歳の頃から「ブランドを立ち上げる」と決めていたので、それをしっかり意識した人付き合いをしてきました。そのお陰で、最初の展示会の時から、たくさんのお客様が来てくださいました。PR会社をしっかりつけたこともあり、デビューの年から伊勢丹や高島屋等の百貨店のバイヤーさんや雑誌の編集者の方々に注目していただきました。



日本人女性が下着を選ぶ際のポイントを教えてください。


自分がインポートの下着を購入している頃、いつもサイズを直していました。

なので、まずは日本人女性の体型にあったサイズ感というのをブランドでは意識して作っています。従来の日本の下着ブランドに対して一番疑問に思うことが、西洋人の体型に近づけるために心地よさが優先されてないんじゃないかなってことです。


海外では、下着は女性の体を飾る要素が強くて、体型を補正させるのはドレスを着るときだけなんです。裸でいるより、レース1枚あるともっと綺麗に見えるとか、下着ってそういう役割をしているんですよ。

日本の女性は、ブラジャー=苦しいもの、という方が多いと思うのですが、本来はもっと楽なもので良いと思うんです。西洋人のような体型が正解、という価値観で日本の下着は発展してきたんですが、本当に大切なのは、着けていてテンションが上がる美しいデザインと、1日中着けていても違和感がない心地よさだと思います。





キラキラしたいだけじゃ続かない。

 オリジナルな信念が大事



自身のライフスタイルやファッション等で、「自分だけのスタイル」としてこだわっている点を教えてください。


子供の頃から家族で海外旅行に行くことが多くて、そこで見たものに影響を受けていると思います。特に印象に残っているのはドイツのノイシュヴァンシュタイン城。その時の華やかなお城の世界観に衝撃を受けました。

その他にも、ヴィクトリア朝のものとか、ヨーロッパのアンティークとかヴィンテージが好きですね。

日本のものだと、尾形光琳も好きだし、艶やかなもの、華やかなものが好きですし、それは作品にも反映されていると思います。



自粛期間中に何か始められたこと、または、プライベートでハマっていること等があれば教えてください。


仕事の面では、家の中で過ごす時間が多くなっているので、家の中を快適に過ごすアイテムというのを考えています。また、オンライン販売がすごく重要だなと思ったので、お客様が買いやすいサイズ展開を増やす予定です。

プライベートでは、もともと料理が好きだったのが、ブランド立ち上げから忙しくてほとんどやってなかったなって思って。器とかも含めて、料理をしっかりやりたくなりました。私の母も陶芸をやっているので、母の器と私の作った料理を組み合わせたり。私の憧れの人は白洲正子さんなのですが、白州さんのように家に置くものを1つ1つを丁寧に選ぶ楽しさ、というのを再確認しました。




以前「ガイアの夜明け」に出演された時にも、妥協しないものづくりの姿がとても印象的でしたが、下着を作る上で「これだけは譲れない」ということがあれば教えてください。


ブランドを始める前は、こんなに大変だとは思ってなかったです 笑

キラキラしたい、っていうだけじゃなくて、自分の中にオリジナルの信念がないと続かないって思います。「なんのためにブランドをやっているか」ってことが一番大事なんだと思います。私にとっては、下着を着けてくださるお客さんがどう感じてくださるかってことが大事なので、私が満足できてないエネルギーってお客様にも伝わっちゃうと思うんです。

私は今でもお客様に直接販売するので、自分自身が「すごい可愛いですよね!!」って言えるものでないと、販売できないですね。

自分が真心を込めて作って、真心を込めて販売するってことがとても大事です。

お客様が私の作った下着が並んでいるのを見て、「温かい気持ちになる」と涙を流してくださることがあるんですが、やはりこちらのエネルギーって伝わるんだと思います。


 

NAO LINGERIE


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